お客様事例

チームワークで精密レーザ溶接を改善

Photon AutomationとCoherentのアプリケーションチームの緊密な連携により、高度なレーザ溶接プロセスの迅速な開発を実現しました。

Photon Automation, Inc.(米国インディアナ州グリーンフィールド)は2000年より、製造業向けの自動化システムを設計、開発しています。生産性の向上やコスト削減を実現するソリューションを一貫して提供できる強みを生かし、高い実績を誇るビジネスを築いてきました。現在、エネルギー貯蔵、医療機器、コンシューマー製品、通信、自動車製造、航空宇宙など、さまざまな分野の顧客にサービスを提供しています。  

Photon Automationは現在、アプリケーション開発ラボ、エンジニアリング事業所、機械工場や製造スペースなど、25万平方フィートの敷地を所有しています。カスタムオートメーションシステムの設計と開発のほか、アプリケーション開発サービスの提供、プロトタイプの製造と試験、製造性考慮設計(DFM)のコンサルティングも行っています。Photon Automationは、半自動のスタンドアロンツールや治具から、完全に自動化された生産ラインまで、幅広い製品を取り揃えています。

2023年、Photon Automationは、エネルギー貯蔵用途で、バスバーとバッテリーターミナルを接合するための溶接システムに入札するよう依頼されました。依頼者はすでに別のプロトタイピング企業とレーザ溶接システムに取り組んでいましたが、結果に完全に満足しているわけではありませんでした。 

特に、エンドユーザーの溶接プロセスで、大量のスパッタが発生していたことが問題でした。このようなスパッタは通常、溶接におけるポロシティや溶接強度の弱さと関係があることを彼らは理解していました。Photon Automationとのこれまでの有意義な実績を鑑みて、同社であれば問題の原因を特定し、問題を解決するために必要な溶接技術を提供できると彼らは考えました。また、Photon Automationはすべてをタイミングよく成し遂げられると彼らは確信していました。  

 

成功のプロセスを見極める

Photon Automationはまず、ミシガン州プリマスのCoherent Labsに連絡を取りました。同社は当社に対し、Coherentのモード可変ビームファイバーレーザ(ARM FL)を使用して、顧客から提供されたサンプルの試験を実施するよう依頼しました。過去にこのレーザを使用した経験から、後方反射耐性、優れたビーム品質、クローズドループの出力制御の高度な機能を独自に組み合わせて、このようなタイプの困難な溶接に適切に対処できることを同社は知っていました。 

この試験で、ARM FLの性能が確認されました。特に、レーザ出力を行ってスパッタの問題を解決する手段を空間的、時間的に制御できるという点です。さらに、この特定のプロセスで、部品の厚みに対応するために、8 kWの出力が必要であることがわかりました。Photon Automationのウィリアム・ハフマンCEOは、「ARM FLで得られた結果に驚きはありませんでした」と述べています。「このようなタイプの極めて要求の厳しい溶接プロセスに対応する高い性能を備えていることは、過去の実績で証明されています」 

また、Coherentは、溶接部の引張試験を実施し、その機械的強度を測定しました。そして、ARMファイバーレーザ加工で、接合部に要求される質を実現できることが確認されました。さらに、Photon Automationは自社独自のCTスキャナを使用し、溶接部の断面の詳細なビューを取得しました。これが必要とされるのは、溶接部の外観が良好であるように見えても、見えない部分に問題が潜んでいる可能性があるためです。研磨され、エッチングが施された断面では、サンプルの前面や背面にあるかもしれないポロシティや割れが表示される場合と表示されない場合がありますが、CTスキャンでは溶接部全体を3次元で表示します。

ARMレーザ溶接部のCTスキャンで、Photon Automationが期待していた結果を確認することができました。つまり、溶接部のポロシティが減少しており、溶接部におけるストレスライザーの集中度の低下と関係があることが確認されました。ストレスライザーは、溶接継手で局所的に応力集中が起こるという特徴です。このような応力集中によって、荷重や振動を受けた際に、割れや疲労といった不具合が発生する可能性が著しく高まることがあります。 

Photon Automationは、CTスキャンの画像を含め、溶接の比較結果を顧客に提示しました。顧客の意思決定において、複数の要因が考慮されましたが、溶接システム製造の契約を獲得できた決定的な要因は、実証された溶接の質であるとPhoton Automationは考えています。 

 

期待通りのレベルを実現する

最初のアプリケーション試験で、要求される溶接プロセスをARMファイバーレーザで実現できることが証明されましたが、Photon Automationは、これに関わるプロダクションレディツールの開発に伴う作業がまだ多く残っていることを把握していました。 

中心的な課題の1つは、レーザ固有のスピード性能とその他の重要な機能を最大限に生かせる制御システムを構築することでした。特に、ARMファイバーレーザが、センタービームとリングビームの出力を極めて高速に、別々に変更する機能は、この機能がない他社製のレーザと比べてアドバンテージとなります。この機能を最大限に生かせば、溶接プロセスの質を向上させ、同社の顧客のニーズを満たすスループット率を実現できると考えられていました。 

この課題は、Photon Automationのコアコンピテンシーに直接結びついていました。特に、レーザソース、ビーム伝送システム、モーション制御、パーツハンドリングロボットを組み合わせ、非常に困難な溶接作業を行うために必要なレベルの精度と制御を実現する能力です。この溶接では、高価値の材料、高性能の継手の要件、幅広い異種材料などの要素が重要となります。このような条件すべてによって、プロセスウィンドウが狭まり、より高度な制御が必要になります。  

Photon Automationが提供していた既製の制御システムでは、8 msから12 msの範囲で遅延がありました。コントローラーが出力の変更を開始してから、レーザが実際に変更に応答するまでの間のこのような遅延によって、リチウムイオン電池セルに導体を溶接しようとする際に重大な問題が引き起こされました。これは、レーザで出力を変更できる速度よりはるかに速く、スキャナが加工面でビームを移動させることが可能であったためです。 

Photonのソフトウェアチームは、既存の制御ハードウェアの遅延の制約に直面し、このような不確定の遅延を補うために、コード内に待機時間を入れる必要がありました。Photon Automationのエンジニア、マイケル・デュポン氏は、疑似的な遅延を組み込み、コードを「チート」して、遅延するハードウェアに対処するのではなく、専用のシグナルプロセッサを使用することが、この障害の的確な解決策になると認識していました。 

デュポン氏は、ワイヤラッピングしたマイクロプロセッサをベースとした制御盤を組み立て、Photon Automationの経営陣にその案を披露しました。これが、Photon Automationの高速専用制御プラットフォーム、WonderBoard™のきっかけとなりました。WonderBoard™は、カスタムレーザパスプランニングソフトウェアを利用した、ワークピース上のレーザの空間位置とあわせて、レーザのセンターとリングの出力を個別に独立制御することのみを目的としています。

Coherentの十分な協力を得て、Photon AutomationはARMファイバーレーザの正確な動作について、Coherentの深い専門知識を活用することができました。これにより、同社は新しいコントローラーのパフォーマンスを完全に最適化することができました。WonderBoard™とCoherent ARMファイバーレーザを組み合わせて使用することで、同社のシステム全体(コントローラー、スキャナ、レーザ)の遅延が2.5 µsまで削減されました。これは、ほぼ5,000倍の改善となります!Photon Automationによるこのような応答性の高いコントローラー、ビーム伝送システム、パーツハンドリングロボットの組み合わせとCoherent ARMファイバーレーザが、納入された溶接システムの核となりました。

「CoherentのARMファイバーレーザが独自の機能を備え、このようなタイプの要求の厳しい溶接アプリケーションに大きなメリットをもたらすことは、このプロジェクトを開始する前から知っていました」と、Photon Automationのウィリアム・ハフマンCEOは述べています。「しかし、このプロジェクトの成功にとって同じように重要だったのは、2つのアプリケーションチーム間の協力と連携のレベルでした。当社の技術担当者は常に連絡を取り、非常に密接に共同作業を行っています。不明な点があるときや、Coherentのアプリケーションラボによる試験が必要なときに、すぐに回答を得ることができます。Photon AutomationもCoherentに協力していきます。当社は、さまざまな機器を有しており、Coherentが直接行えない試験を実施することができます。たとえば、PhotonのCTスキャニング機能を使用できるようにします。この体制により、レーザから可能な限り最高のパフォーマンスを引き出し、非常に速く達成することができます。その結果、お客様を常に満足させ、競争力を維持できるようになります」 

 

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「Coherentのラボには、問題解決能力の高いクリエイティブな人材がいます。このような人材と質の高いレーザ技術を有する同社は、非常に困難な溶接の課題を克服するためのパートナーとなります」

— ウィリアム・ハフマンCEO、Photon Automation, Inc.

 


 



金属へのハイコントラストレーザマーキング

Photon Automationによる、バッテリー溶接の完全自動化システムです。

 

金属へのハイコントラストレーザマーキング

バッテリーとバスバーターミナルの溶接で、機械的強度が高く、電気抵抗の低い2つのアルミニウム部品を接合しました。

 

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