お客様事例
信頼性の高い高出力CO₂レーザによるランプ製造の改善
Coherent のDCシリーズレーザの1 kWモデルは、この産業プロセスに求められる性能、信頼性、コストを兼ね備え、Coherent は、インテグレーターが作業を容易に進められるようにサポートします。
100年以上にわたって溶接に携わってきた経験を持つ、工作機械メーカーのArnold Ravensburg(ドイツ、ラーベンスブルク)は、溶接技術のエキスパートです。同社は、レーザ溶接をいち早く導入した企業の1社であり、1985年から独自のシステムを構築しています。
特にCO₂レーザに関する、卓越した専門技術を保有することから、Arnold Ravensburgには世界中の企業から、自社の最も困難な溶接の課題を解決してほしいという依頼が舞い込みます。同社が個々の顧客に固有の問題に対して、「多用途向け」(one-size-fits-all)のアプローチを無理やり当てはめることはせず、通常は、レーザ、ビーム伝送システム、治具、部品ハンドリングロボットを組み込んだ、カスタムソリューションを開発することを、彼らは理解しています。
ランプの封止
2023年、ある大手照明製品メーカーからArnold Ravensburgに対し、アーク放電ランプの封止を行うシステムを提供してほしいという依頼がありました。具体的には、石英ガラスでできた円筒形のランプ管を溶融して、陽極と陰極を支持する内部セラミック構造に封止する必要がありました。ランプ管の全周をぐるりと囲んで、連続的に気密に封止を行わなければなりません。この処理は、後の工程で充填される高圧混合ガスを保持するために必要です。また、ランプの耐用期間が終わるまで、この封止を維持する必要があります。
この処理を行うには、ランプ管の全周の2箇所でガラスを溶融して、内部のセラミック部品との間を気密封止する必要があります。そうすることで、ランプの耐用期間を通して、ガスが充填された状態を保つことができます。
この照明メーカーは当初、炎を使ってこの封止処理を行っていましたが、この10年間で、レーザ加工への移行を果たしています。レーザ封止の方が再現性が高く、パイロメーターシステムを使用して温度検出を行うことで、プロセスをより適切に調整して、一貫性と歩留まりを高められることが、明らかになっていました。
しかし残念なことに、同社が当初利用していたレーザシステムサプライヤーに、品質と納入の問題が発生しました。同社は、より高速で一貫したプロセスを提供し、納期を守ってくれる新しいベンダーを探していました。
この照明メーカーは、Arnold Ravensburgと既に取引があり、自然な流れでこのプロジェクトを同社に依頼することにしました。特に、このアプリケーションに対する唯一の実用的な光源はCO₂レーザであり、Arnold Ravensburgはこの技術のエキスパートであることを考えれば、ごく当然の成り行きだったといえます。
CO₂レーザが必要となるのは、ランプ管の材料が、可視光や近赤外光を透過するためです。つまり、CO₂レーザよりも短い波長のレーザでは、簡単には加工できません。その光は、材料を通り抜けるだけで、材料に吸収されて材料を加熱することはないためです。
レーザの選択
このアプリケーションにCO₂レーザが必要であることは明らかでしたが、Arnold Ravensburgはまず、プロセスの仕様を決定する必要がありました。同社は、所望のスポットにレーザエネルギーを印加しながらランプ管を連続的に回転させることが、最適な方法であると判断しました。そうすることで、ランプ管は急速に加熱されます。材料の温度を、非接触式のパイロメーターで連続的にモニタリングし、適正値に達した時点でレーザを停止します。ランプ管をそのまま回転させ続けると、流れる溶融ガラスによって封止が行われます。
Arnold Ravensburgのエンジニアは、プロセスパラメータが異なる可能性があるために、両方の封止を同時に行うことはできないことに気づきました。そのため、2つの封止処理はシーケンシャルに行われます。ランプ管材料の流速によって処理速度が制限されるため、各溶接の実行に約3分の時間がかかります。
このプロセスには、約800 Wのレーザ出力が必要です。Arnold Ravensburgは、Coherent の「DC 010」をこのアプリケーションのレーザ光源として選択しました。これは、当社のDCシリーズの1 kWモデルです。DCシリーズは、スラブ放電構造を採用する高出力シールドCO₂レーザで、最大で8 kW出力のモデルが提供されています。
「DC 010の採用を決めたのには、いくつかの理由があります」と、Arnold Ravensburgのセールスディレクターを務めるハンスイェルク・クロッツ氏は述べています。「密閉されたスラブ放電設計は、他のマルチkW CO₂レーザに採用されている高速フロー構造よりもはるかに信頼性が高いとして、当社のエンドユーザーに高く評価されています。信頼性が高いだけでなく、運用コストは低く、耐用期間は長く、メンテナンス間隔は長いという利点もあります。また、密閉されているために、産業環境において必ず懸念される、汚染物質がレーザに混入することによる問題が回避されます。最後に、DCシリーズの出力パワーは、レーザの耐用期間を通して一定であるため、優れたプロセス一貫性が保証されます」。
成功のためのパートナー
クロッツ氏は、Arnold Ravensburgのような機械メーカーの観点から、統合のしやすさを重要な利点として挙げています。「Coherent のDCシリーズのレーザをこれまでに何度も使用したことがありますが、これを中心にシステムを構築する作業は、とても単純明快です。このレーザは、フィールドバス環境にシームレスに適合する、真の産業用インターフェースを備えます。当社顧客の多くがProfibusプロトコルを使用しており、Siemensコントローラがほぼどこでも導入されているドイツでは特にそうです。DCシリーズはこのプロトコルを直接サポートします」。
「もう1つの決め手は、Coherent 自身です」とクロッツ氏は述べています。「当社はCoherent をパートナーと考えており、必要なサポートや情報を、いつも同社から簡単に得ています。例えば、光学計算を行うために特定のレーザのビーム特性に関する詳しいデータが必要になることが時々あるのですが、Coherent は決してためらうことなくそれを提供してくれます」。
「また、当社の経験では、Coherent のレーザは、ユニット間の一貫性に優れています。そのため、光学系を設計したら、個々に大きな調整を加える必要はないと確信して、システムを構築することができます。ビームの安定性についても同じで、設置後に変更する必要はありません。これは、当社自身の設計理念に非常に合致します。Arnold Ravensburgのビーム伝送システムは、ミラーを交換しても光学アライメントの再調整は不要になるように、設計されています。しかしもちろん、そのためには、レーザポインティング自体が安定していなければなりません」。
「年に一度メンテナンスするだけで稼働し続けてくれる、頼れるレーザです」と、クロッツ氏は述べました。「性能の問題や故障が現場で起きることを心配することなく、設置できます。Coherent のDCシリーズのレーザをシステムに採用することで、当社と当社顧客の頭痛の種が解消されます。そしてそれは、顧客がリピーターとなってまた当社を利用してくれることにつながります」。
“「出力の安定性と一貫性に加えて、高い動作信頼性を備えるCoherentのDCシリーズのCO₂レーザは、インテグレーター、ラインビルダー、そしてエンドユーザーにとっても、理想的なレーザです」"
– ハンスイェルク・クロッツ氏、Arnold Ravensburgセールスディレクター

図 1. ガラスランプ管を対象としたArnold Ravensburg製のこのレーザ溶融システムは、2箇所でガラスを溶融して、ランプ管を気密封止します。

図 2: Coherent DC 010レーザで所望のスポットにレーザエネルギーを印加しながら、ランプ管を連続的に回転させます。

図 3: DCシリーズは、安定性に優れた拡散冷却式マルチkW CO₂スラブレーザで、1~8 kW出力のモデルが提供されています。