オプトジェネティクス – 光で細胞や動物をコントロールする
オプトジェネティクスにより、研究者は、光(通常はレーザからの光)を使用するだけで神経細胞を活性化させたり、不活性化させたり、操作したりすることができます。
2022年2月8日、Coherent
今から300年以上前、ルイジ・ガルバニはカエルの足に電気を流すとけいれんすることを発見しました。これは、神経細胞(ニューロン)が、電気パルスを発生させて、発生した電気パルスがニューロンの長さに沿って移動することで機能するからです。この電気パルスを「活動電位」と呼びます。
科学者は長年にわたり、小さな電極を使ってニューロンに電気パルスを加えて、命令に応じてニューロンを発火させてきました。これにより、科学者はニューロンの一部がどのようにつながっているかを調べ、さらに脳のどの部分が体のどの部分をコントロールしているかをマッピングしました。
しかし、脳は私たちの身体の動きをコントロールするだけではありません。脳は、考え、記憶し、私たちの感覚器官(目、耳など)から入ってくるすべての信号を処理します。25年ほど前までは、名前を思い出す、友人の顔を認識するなどのごく普通の作業でさえ、脳がどのように機能しているのかよくわかりませんでした。
それが今、とても速く変化しています。科学者は、あらゆる種類のツールや技術を使って動物の脳を研究しています。特にマウスは、人間と基本的な脳の構造が似ている哺乳類であるため、よく使われる実験材料です。
脳科学を活気づけるオプトジェネティクス
神経科学者のツールボックスの中にある最新の方法は、オプトジェネティクスと呼ばれています。これは電極の代わりに光を使って神経を発火させます。これを実現するために、科学者はオプシンと呼ばれる特殊なタンパク質分子を使用します。具体的には、これらは光が当たると反応するタンパク質です。
2005年、神経科学者のカール・ダイセロス、エド・ボイデンらは、遺伝子操作によってマウスなどの動物でオプシンを組み込んだ神経細胞を発生させ、光刺激に反応するようにできることを示しました。さらに、遺伝子操作を正確に行い、どの種類の神経細胞がどの種類のオプシンを「発現」させるかを正確に選択できるようにしました。
このように、生きているマウスの神経細胞に、物理的に電極を接続するのではなく、ある色の光を当てるだけで、神経細胞を発火させることができるようになりました。また、別の色の光を当てることにより神経が発火するのを防ぐために別のオプシンを使うこともできます。これがオプトジェネティクスです。
オプトジェネティクスのためのレーザの軽快さ
オプトジェネティクスの大きな利点は、光が非接触の選択的なツールであり、物理的な電極よりもはるかに侵入性が少ないことです。また、光は対象の動物を傷つけることなく、すばやくあちこちに移動することができます。さらに、レーザであれば、小さなスポットに絞って照射することができるので、脳の特定の部分だけを刺激する(または不活性化させる)ことができます。
最先端のオプトジェネティクス実験では、Coherent Monacoのようなウルトラファーストレーザが使用されています。ウルトラファーストレーザの利点は、「多光子励起」と呼ばれる効果を利用して、マウスの脳内の個々の神経細胞を選択的に励起することができることです。さらに、この技術に使われている赤外光は、大脳皮質に効率よく浸透します。
最近では、コンピュータのアルゴリズムでコントロールされた複数のレーザスポットのパターンを投影する神経科学者も増えています。これにより、正確に的を絞った何百もの神経細胞を刺激し、それらがどのように相互作用するかを正確に見ることができます。これが実際にどのように起こるのかを追跡するには、Coherent AxonやChameleonシリーズのレーザとMonacoを組み合わせた、さまざまな多光子励起(MPE)顕微鏡技術を使用します。
最終的に、神経科学者は、より多くのニューロンがどのように通信し、相互に作用しているかをリアルタイムで計測できるようになるでしょう。神経が電気パルスで機能することがわかってから約250年後に、科学者はようやくマウスの脳が右に曲がるか左に曲がるかを決める仕組みを解明しつつあります。あとは、車のキーをどこに置いたか覚えていれば...
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