ホワイトペーパー
成形表面へのレーザマーキングを担うシンプルな自動化ソリューション
拡大する3Dマーキングの需要
レーザマーキング市場では、非平面(曲面、傾斜面、段差面、自由形状の物体、凹面など)へのマーキングやテクスチャリングのニーズが高まっています。 従来のレーザマーカーや一体型マシンは、平面的な視野に限定されるという問題を抱え、マーキング中に部品を回転・移動させることで単純な傾斜面や円筒面に対応します。 ただし、より複雑な形状の表面を扱うには、高コストかつ複雑なプログラム式ロボットや、込み入った5軸マシンに頼るしかありませんでした。
「SmartMap 3Dは、先進的なハードウェアとソフトウェアを兼ね備えており、これらを強力なマーキングソフトウェアで制御します」
図1. 新しい「スマート」なアプローチにより、ほとんどあらゆる形状や面方向にマーキングでき、穴の中やはめ込み部へのマーキングも可能です。 ステンレスを対象とするこの例では、超短パルス(USP)レーザをベースとするCoherentのブラックマーキング法を活用しています。
これに対し、Coherentが開発した自動「スマート」ソリューション「SmartMap 3D」は、先進的なハードウェアとソフトウェア(実証済みの高速可変焦点法と新しい3Dマシンビジョン)を兼ね備え、これらすべてを強力なマーキングソフトウェア(Visual Laser Marker)で制御します。 両者を統合したこの使いやすいソリューションは、プロセス全体を簡略化するだけでなく、固定やクランピング、配置を精密に行うためのコストと時間も削減します (このソフトウェアは、オンザフライでのマーキングなど、よりシンプルなマーキング用途にも対応しています)。 この記事では、費用対効果の高いこのアプローチの主な特長と利点をご紹介し、マーキングサブシステムと完全なマシンの両方で3Dマーキングに使用できるという利便性に注目します。 また、SmartMap 3Dはレーザの種類に依存しないため、色の変化や彫刻などのさまざまなレーザマーキングのほか、粗面化や構造化などの精密表面処理、さらにステンレスおよびアルミニウム製品への超短パルス(USP)レーザによる最新のブラックマーキングにも使用できます(図1を参照)。SmartMap 3Dは現在、Coherentのすべてのレーザマーカーおよび完全なマーキングマシンでご利用いただけます。
レーザマーキング - 汎用性およびその他の利点
レーザマーキングは、多くの業界で広く使用されている汎用性の高いプロセスであり、これを最適化することによって、ほぼあらゆる材料に高コントラストの高耐久マークを作成できます。 これらのマークは、製品の識別や追跡、偽造防止によるブランド保護、または機能的な目的(フィデューシャルなど)で活用できます。 また、ブランドロゴなどの審美的マーク(コンピュータタブレットなど)や、自動車部品の装飾マークおよび特殊なテクスチャ(トリム部品、ダッシュボードと関連ボタン、シフトレバー、テールランプの細部など)の製造需要も急増中です。
各マーキングタスクの詳細な要件は用途ごとに大きく異なるものの、メーカーは多くの場合、高耐久マークの製造を望み、特に意図的な改造や偽造が困難なマークを求めています。 この点で、レーザはインクジェットやパッド印刷よりもはるかに優れています。 また、多くの食品・飲料用途や一部の医療機器・医薬品では、患者様の体内に直接摂取または設置される物質や器具にマークが接触する可能性があります。 これらにおいても、昔ながらのインクによるマーキングは通用しません。 さらに、一般的な要件として、マーキング加工が周囲の(マーキングされていない)材料や下層に悪影響を及ぼさないこと、後処理(洗浄など)が最小限または不要であることも求められます。 この空間選択性は、マーキングのレーザ出力と波長、パルス幅を対象材料の吸収・熱特性に合わせることで、高精細なマークに関してもいくらか単純化されます。
レーザマークは、レーザアブレーションによる表面材料の除去(彫刻)と材料の色の変化のどちらに該当するかによって大別されます。 材料の除去には、単純な彫刻以外に、コーティングや塗料層の選択的な除去があります。 色の変化には、赤外線レーザによる食品カートンの局所的な焦げといった単純なプロセスのほか、紫外線レーザによる白色プラスチック(台所用品に使用される二酸化チタン含浸ABS樹脂など)のダークニングといった色変化、可視または紫外線レーザによるプラスチック添加物の色変化、着色ポリマーへの白色マーク作成に使用されるフォーミングなどがあります。また、最近では、USPレーザを用いた特定の金属表面の「ブラックマーキング」という形態もあります(図1を参照)。Coherentは、これらすべてのレーザを広範な出力レベルで製造しており、新たなマーキングタスクを自社のアプリケーションラボで詳細に評価し、最適化できます。 その上で、レーザ単体からレーザマーキングサブシステム、位置合わせや自動ソーティングの機能を備えた完全なマシンまで、さまざまな形態のソリューションをご提供します。 さらに、すべてのレーザシステムおよび一体型マシンで現在、以下のようなシンプルな3Dマーキングが可能なSmartMap 3Dオプションを提供しています。
「Coherentは、レーザ単体からレーザマーキングサブシステム、位置合わせや自動ソーティングの機能を備えた完全なマシンまで、さまざまな形態のソリューションをご提供します」
従来のシステムやサブシステムの限界を超越
エキシマレーザの高エネルギーパルスを用いたマスクベースのマーキングという顕著な例外を除き、レーザマーキングの大半は、マーキング対象の表面上に集束されたレーザスポットのスキャニングをベースとしており、場合によっては、マーキング対象部品の連続的または段階的な動作を併用しています。 このプロセスを実行するのが3つの主要光学コンポーネント、すなわち、レーザと、xy方向に直交するビーム走査を行うデュアルガルバノスキャナー、そしてスポットを正しいz距離(つまり作業面)に集束するビーム伝送レンズです(図2(a)を参照)。 ビーム伝送レンズは通常、Fシータ型です。 Fシータレンズは、湾曲した焦点面を持つ従来の球面集束レンズとは異なり、平らな焦点面を生み出すよう設計されているため、レーザビームの焦点深度は、レンズ全体における位置(つまりマーキング面における位置)に依存しません。 このため、レーザビームに対して垂直な平面には非常に有効ですが、焦点深度が浅いため、集束レンズから対象面までのz距離が大きく変化する3Dマーキングには適していません。
ロボットシステムで3D表面をマーキングするとなると、伝送光学系、および場合によってはレーザサブシステム全体が作業面に対して相対的に移動し、作業面自体もまたロボットによって移動する可能性があります。 この場合、面倒かつ高価で複雑なプログラムが必要となるほか、複雑なグラフィックスや小さな文字に要求される精度の実現が困難になることがあります。 その点、SmartMap 3Dは、光学系内に設置された高速フォーカスモジュールを使用することで光学系や部品の移動を排除し、よりシンプルかつ迅速で経済的な代替ソリューションを提供します(図2(b)を参照)。 これによって焦点距離の速やかな調整が可能となり、 レーザとスキャンシステムの仕様に応じて、公称焦点距離から最大±130 mmの範囲に対応可能です。 このzスキャンとデュアルガルバノスキャナーによるxyスキャンを併用することにより、スポットのサイズや形状を変えることなく、目標ボリューム内の任意のxyz位置に集束レーザを配置できます。
「SmartMap 3Dは、よりシンプルかつ迅速で経済的な代替ソリューションを提供します 」
図2. (a)一般的な2Dマーキングのセットアップでは、縮尺の正しいコンテンツを平面上に作成できます。 (b)SmartMap 3Dでは、フォーカスシフターモジュール(FFM)を使用することで、縮尺の正しいマークを目標ボリューム上に作成できます。
SmartMap 3D - ハードウェア、ソフトウェア、3Dマシンビジョンの融合
シンプルな3Dマーキングに欠かせないもう1つの重要な要素として、Visual Laser Marker(VLM)には、ユーザーフレンドリーなソフトウェアオプションがあります。このソフトウェアは、具体的なワークピースへのマーキングに必要なフォーカスモジュールとガルバノスキャナーの動作の組み合わせを自動的に決定します。 また、レーザマーキング用途に関するCoherentの40年以上にわたる経験を踏まえ、このソフトウェアは、ワークピースの表面を定義し、これをジョブタイプごとに保存します。 ユーザーは、直感的なGUI操作を通じ、マークを対象表面にマッピングします。 マークの詳細は、一般的に使用される2種類の3Dサーフェスマッピングのいずれかを使用して、生成・保存可能です。 最も直感的なのが、プロジェクションマッピングと呼ばれる手法です。この場合、マークは、固定された一視点に対する相対的なベクトル上の一連の点として定義されます (固定入力レーザによるマーク作成に匹敵するため、最も直感的といえます)。 球体、錐体、立方体などの正多面体については、VLMでuvマッピングを作成できます。 この場合は、直交座標uとvを用いて、一連の2D表面(平面)セグメント上にマークを定義します。これによって、pdfやdxf文書など、既存のマークファイルの使用が可能となり、QRコードやバーコード、関連マークなどの柔軟なコンテンツに対応できます。 これらのセグメントは、さまざまなアルゴリズムを用いてワークピース表面の実際のxyz座標にマッピングされます。 複雑な形状のワークピースや、部品を覆うグラフィックスの場合、熟練ユーザーは、自分が使い慣れたCADソフトウェアからデータをインポートしてVLMで編集することを好むことがあります。実際、商用CADプラットフォームの多くがこのエクスポート形式を提供しています。 また、VLMの3Dビュー機能は、マーキング後の部品の外観の正確なプレビューを提供し、図面の配置や、フォールスカラーによるクリッピング角度の可視化、そしてマシンの軸の動きの設定まで、すべてをプレビューウィンドウでサポートします。
SmartMap 3Dシステムの3つ目の要素がハードウェア、すなわち、マーキング前に各部品をスキャンするマシンビジョンのラインカメラです。 2種類の波長が用意されているため、マーキング可能なほぼあらゆる素材の反射率と色に対応できます。 このビジョンコンポーネントの統合により、スマートマーキングソフトウェアが、部品の形状や方向をマーキング前に3次元の点群として検知します。 これらの結果が、保存されているその部品のCADモデルファイルと比較され、 一致度のスコアがパーセンテージで提示されます。 GUIのオプション機能では、この一致度をカメラ画像のフォールスカラーオーバーレイで表示することもできます。 また、オペレーションを自動化し、総合的な一致度が最低スコアを超えた場合にマシンがジョブのマーキングを行うようにすることも可能です。 この許容最低スコアは、保存されている各ジョブタイプのルーチンでユーザーが選択するパラメータの一つです。 あるいは、GUIのプレビューとスコアに基づき、マーキングを開始するか、より高い一致度を目指してワークピースの位置および方向を調整するかをオペレーターが決定することもできます。 なお、比較対象となるCADモデルがない場合は、点群を3Dサーフェスに変換し、VLMで直接使用することも可能です。 したがって、このツールは、高額なコストのかかる精密な固定処理を必要としないロットサイズ1やジョブショップ生産に最適です。
「このスマートなシステムは、レーザやワークピースを移動させることなく、ワークピースのさまざまな配置に対応できます」
図3. 3Dカメラにより、スマートマーキングソフトウェアが、部品の形状や方向をマーキング前に3次元の点群として検知できます。
このスマートなシステムは、いくつかの重要なパラメータ(投影歪み、クリッピング角度、頂点角度、3Dサーフェスの方向など)を考慮するため、レーザやワークピースを移動させることなく、ワークピースのさまざまな配置に対応できます。
投影歪み: レーザビームはプロセス全体を通じて同じ一点から照射されるため、スキャンシステムは、マーキング加工中に発生する幾何学的歪みも補正しなければなりません(図4を参照)。このような歪みの補正は、角度のついた平面や円柱など、比較的単純な形状を扱う場合に広く採用されてきました。 しかし、任意の3D自由形状では、はるかに困難になります。 そこで、アップグレードされた新しいVLMソフトウェアでは、これらの補正をすべて自動的に行うことにより、この問題を解決しました。 このソフトウェアの有効性を図5に示します。
クリッピング角度: 従来の2Dマーキングは、レーザビームが常にワークピースの表面に対して垂直に近く(つまり「垂直入射」に近く)(±10°)なるよう構成されます。一方、3Dマーキングでは、垂直入射とは大きく異なる角度でレーザマーキングを実行できます。 採用可能な最大角度は、ワークピース表面の吸収率と反射率によって決まり、クリッピング角度と呼ばれます。 これは、各ジョブに対してオペレーターが個別に選択することにより、同じレーザマーカーやマーキングマシンで異なる材料にマーキングできるよう調整可能です。
頂点角度: xy軸におけるマーキングボリュームの限界を定義するものです。 これはつまり、マーキング光学系の視野と、Fシータレンズの焦点距離です。 VLMは、インストールされているすべてのマシンまたはサブシステムに関してこの情報を保存します。 オペレーターがこの物理的な限界を超えるマーキングを行おうとすると、自動的にエラーとして拒否されます。
図4. 投影歪みは、曲面に非垂直入射で「直線」をマーキングする際に発生します。
「SmartMap 3Dは、押しボタンによるシンプルな操作と自動化をもたらし、自動車やコンシューマーエレクトロニクス、家電など、さまざまな業界でレーザマーキングの可能性を最大限に引き出します」
図5. CoherentのSmartMap 3Dマーキングシステムを活用するには、部品のCADモデルをソフトウェアにインポートし、そのワークピースにユーザーが目的のマークを配置します。 最終的な結果には、ワークピース上で正しいマークジオメトリを達成するために歪み補正が必要である旨が示されています。
概要
レーザマーキングには、ほとんどあらゆる材料に数字や記号、ロゴなどのグラフィックスを作成できるという独特な利点があります。 これまでのレーザマーキングの多くは、平面や単純な形状に限定されていました。 自由形状へのマーキングは、考えられる用途の多くにおいて複雑すぎ、高価すぎるものでした。 この状況が今、大きく変わります。スマート3Dマーキングシステム「SmartMap 3D」の登場は、押しボタンによるシンプルな操作と自動化をもたらし、自動車やコンシューマーエレクトロニクス、家電など、さまざまな業界でレーザマーキングの可能性を最大限に引き出します。