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Coherent Paladinレーザによる高性能ジャイロスコープの飛躍的な進歩

原子を理解する道のりは、人類の歴史の中でも特に注目すべき科学的な挑戦です。ニールス・ボーアやアーネスト・ラザフォードなどの初期の物理学者は、20世紀初頭に原子の謎の解明に着手し、近代原子物理学の基礎を築きました。原子の核構造に関するラザフォードの革新的な研究と、電子の軌道を説明するボーアのモデルは、私たちが原子挙動を理解する上で、重要な技術的マイルストーンになりました。私たちの知識が深まるにつれて、素粒子をかつてない精度で操作、研究する能力も向上しました。

現在物理学において、この道のりは、イオントラッピングや物質波の干渉などの高度な技術の開発につながっています。これらの手法により、科学者は、素粒子を桁違いの精度で制御、測定できるようになり、量子力学や応用技術に新しい可能性が開かれました。この最先端の実験の中心にあるのは、高度なレーザの使用です。レーザは、原子の状態を操作するときや、原子レベルの精密な測定を行うとき、そして、分子ピンセットとして使用して1つの原子を所定の位置に保持するときに極めて重要な役割を果たします。


Coherent Paladinレーザを使用した高性能ジャイロスコープの開発 

そうしたレーザの一つであるCoherent Paladinレーザは、イオントラッピングの分野で不可欠なものとなっています。超高速かつ高出力のレーザパルスを生成することにより、科学者はPaladinレーザを使って、イオンの重ね合わせ状態を作り出し、操作することが可能となりました。これにより、量子力学の革新的な実験が促されています。Paladinレーザは、その独自の特性により、イオンの状態遷移を推進するのに最適であり、物質波の干渉を伴う研究や高性能ジャイロスコープの開発に欠かせません。

東京工業大学の向山敬博士は、20年以上の経験を持つ実験原子物理学者です。現在、向山博士は、量子センシング技術を用いて、高精度でコンパクトな分子ジャイロスコープを開発しています。量子力学の原理を活用し、Paladinレーザを用いた先進的なレーザ技術を利用することで、向山博士は、電場で捕捉されたイオンを操作し、多次元の重ね合わせ状態を作り出しました。これにより、干渉現象を通じて前例のない精度と確度で回転運動を測定できるようになりました。

向山博士は、その論文『Three-Dimensional Matter-Wave Interferometry of a Trapped Single Ion(捕獲された単一イオンの3次元物質波干渉計)』において、捕獲した171Yb+イオンを用いた3次元物質波干渉計を実証するとともに、モードロックパルスPaladinレーザを使ってイオン運動の精密な制御を実現しました。1

このレーザを使用して、誘導ラマン遷移によりイオンの運動を開始・操作し、干渉測定に不可欠な重ね合わせ状態の生成が実現しました。トラップ周期の整数倍で建設的干渉を観測し、3次元の運動と理論的解析を検証しました。この研究は、イオンを用いた量子センシングアプリケーションの可能性を示唆するもので、レーザの精度がこの結果を得るために重要な役割を果たしました。また、Paladinレーザは産業および科学用途に特化して設計されており、長時間の連続的な動作を保証します。一度起動すると、レーザは自律的にその機能を果たし、安定した性能で動作し続け、1日24時間、365日、最適なパフォーマンスを維持します。


量子センシング研究に最適な超高速Paladinレーザ

Paladinレーザは超高速パルス(15ピコ秒)を高い繰り返し周波数(120メガヘルツ)で生成し、イオンの状態を正確に遷移させ、エネルギー準位のシフトを最小化させると向山博士は述べており、自身の研究においてこのレーザが重要な役割を果たしていることを明らかにしています。向山博士はこう語っています「レーザは非常に強力で、かつ非常に高速でなければなりません。したがって、レーザの時間幅は短く、レーザの総出力は非常に大きくなければなりません」。

Paladinレーザの355ナノメートルでの狭い遷移幅は、特定の量子状態への遷移を推進するのに最適であり、干渉を正確に測定するために欠かせません。これにより、ジャイロスコープ技術のアプリケーションの可能性が大幅に広がります。このレーザは、向山博士が研究目標を達成する上で中心的な役割を果たしています。一貫性のある性能とイオントラップ装置との互換性により、これらの実験に必要な精度と再現性を得るために不可欠なツールとなっています。

向山博士のイオントラッピングと物質波干渉に対する革新的なアプローチによって、量子ベースのジャイロスコープの開発が飛躍的に進展しました。向山博士がCoherent Paladinレーザを使用したことで、このレーザの最先端の優れた性能が実証され、博士の研究も大きく前進しました。「レーザの出力、パルスの時間幅、波長、繰り返し周波数というパラメータを考慮すると、Paladinレーザは私の研究に最適です。他に適切なレーザを見つけることはできません」

Paladinレーザを利用して、向山博士は空間と時間の本質に対する私たちの理解を、1光子ずつ深めています。

 

参考資料

1. Shinjo, A., Baba, M., Higashiyama, K., Saito, R. & Mukaiyama, T.『Three-Dimensional Matter-Wave Interferometry of a Trapped Single Ion(捕獲された単一イオンの3次元物質波干渉計)』 Phys. Rev. Lett. 126, 153604 (2021).

 

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"レーザの出力、パルスの時間幅、波長、繰り返し周波数というパラメータを考慮すると、Paladinレーザは私の研究に最適です。他に適切なレーザを見つけることはできません"

— 東京工業大学教授、向山敬博士

金属へのハイコントラストレーザマーキング

 

 

金属へのハイコントラストレーザマーキング

東京工業大学でイオントラッピングの実験を開始する前にPaladinレーザを調整している向山敬博士(左)と齋藤了一博士(右)。

 

金属へのハイコントラストレーザマーキング

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