ダイヤモンドヒートスプレッダーとは?
ダイヤモンドヒートスプレッダーは、放熱に使用される合成(またはラボで造られた)ダイヤモンドの薄い(通常2 mm以下)シートです。通常は、熱源とヒートシンクの間に配置されます。
ダイヤモンドは一般的に、特に電子デバイス内の熱を制御するのに使用される熱管理、材料、および技術とは関連がありません。
しかしこれは、特殊な高性能電子機器内の潜在的に有害な熱を逃がすのに使用される、永久的かつ驚くべき熱伝導体であることがわかりました。
多くの電子部品は作動すると熱を帯びるため、この熱を取り除くことが部品の性能と寿命にとって不可欠となります。熱は電子部品の特性を変え、年月とともに効率を損ない、部品に損傷を与えることさえあります。熱管理は、部品から熱を逃がす科学です。
ダイヤモンドはその硬さで広く知られていますが、実際には他に2つの特性(導電性と熱伝導性)があり、これらがヒートスプレッダーでのダイヤモンドの使用が急成長している鍵となっています。
銅よりもすぐれた優秀な伝導体
熱を移動させる材料の能力は熱伝導体で測定されます。熱伝導対はメートルケルビンあたりのワット数(W/mK)で測定されます。 1 W/mKの伝導率をもつ材料は、厚さ1メートル全体で温度差1ケルビン(または摂氏)あたり1ワットの割合で熱を伝導します。
銅は一般に、電子部品から熱を逃がすために使用されます。約400 W/mKの熱伝統率をもつ銅は、多くの用途に選ばれています。しかし銅は重く、すぐに変色したり腐食したりする可能性があります。そのためマイクロエレクトロニクスや過酷な環境下、1グラムが重視されるような航空宇宙分野における使用には適していません。最後に、銅は電気をよく通すため、エレクトロニクスの熱管理にこれを使用する際に技術的な問題を引き起こす可能性があります。
ダイヤモンドは一般的な炭素の結晶配置です。熱伝導率は1,500〜2,200 W/mKという、あらゆる材料の中で最も高く、銅の約5倍です。ダイヤモンドはなぜこれほど熱をうまく伝導するのでしょうか? 鍵となるのはその構造です。
ダイヤモンドの構造図。
ダイヤモンドは立方結晶構造です。各炭素原子が共有結合によって他の4つの炭素原子と結合し、四面体(ピラミッド型)を形成します。この構造には自由電子がないため、ダイヤモンドは電気を通しません。銅などの一般的な熱伝導体は自由電子をもつため、高い導電性があります。こうした熱伝導体は周辺の電子を利用して熱を伝導します。ダイヤモンドは導電性がないため、熱は原子の振動によってのみ伝わります。ダイヤモンドの硬い連続的な結晶構造により、これらの振動が1粒のダイヤモンドを通して非常に速く伝わります。そしてそれは、熱伝導の速さにもつながります。
純度はダイヤモンドの熱伝導性の鍵となります。ダイヤモンド内の不純物は、格子振動を遅らせたり中断したりする可能性があるため、熱伝導の効率が悪くなります。(不純物の中にはダイヤモンドの主要な特性を変化させてしまうものもあります。たとえば、天然ブルーダイヤモンドにはホウ素が含まれているため、半導体になります。)
ダイヤモンドの結晶構造は、酸、塩基、オキシダント、その他の化学物質への非常に高い耐性をもっています。これは既知の天然素材の中で最も硬いとされています。(より硬い、特殊な人工材料も存在しますが、これらにはダイヤモンドがもつその他のユニークな特性はありません。)
ダイヤモンドは高性能マイクロエレクトロニクスの熱管理に適した材料です。ダイヤモンドヒートスプレッダーは、銅やアルミニウムより熱伝導率がはるかに高く、電気を通さず、軽量で、腐食に強く、耐久性に非常にすぐれています。
なぜ銅やアルミニウムやSiCではなくダイヤモンドなのか
銅やアルミニウム、Sicのような他の材料の代わりにダイヤモンドを熱伝導体として使用する理由はいくつかあります:
熱伝導率:ダイヤモンドは、最も高いとされる1,500〜2,200 W/mKの熱伝導率を持ちます。銅の熱伝導率は400 W/mK、アルミニウムは220 W/mKです。
熱安定性:ダイヤモンドは温度の違いによって膨張したり収縮したりすることがあまりありません。つまり、広範囲の温度できわめて安定した状態を保つということです。また、広範囲の温度で熱伝導率を維持します。この2つの特性はどちらも、スペースが限られているマイクロエレクトロニクスにおいて鍵となります。
3. 腐食性: ダイヤモンドは強酸、強塩基、さらに有機溶剤に対する耐性があります。
4. 導電性: ダイヤモンドは電気を通さないため、非常にすぐれた絶縁体です。
5. 耐久性: ダイヤモンドは既知の材料の中で最も硬いものの1つです。
6. 軽量: ダイヤモンドは銅のような他の一般的な熱伝導材料と比較して軽量です。
7. 透明性:ダイヤモンドは透明性があります。
ダイヤモンドヒートスプレッダーはどのように作られるか
ダイヤモンドヒートスプレッダーは、他の合成ダイヤモンド材料と同じように作られます。強力なマイクロ波がメタンガスを吹き飛ばし、炭素原子を放出してダイヤモンドのシード層の周囲で結晶化します。ダイヤモンドのウェハが時間をかけてゆっくりと成長します。ダイヤモンドヒートスプレッダーはさまざまな形状やサイズで作ることができますが、通常はほんの2 mm以下の厚さです。多くは不透明で黒色ですが、必要に応じて透明にすることもできます。ダイヤモンドヒートスプレッダーは強力なレーザや、ダイヤモンドの表面をもつその他の切削工具で、切断したり成形したりすることができます。
ダイヤモンドヒートスプレッダーはどこで使用されるか?
ダイヤモンドヒートスプレッダーは、高度に効率的で、軽量で、耐久性があり、絶縁性のある熱伝導体を必要とするどんなところでも使用されます。ダイヤモンドヒートスプレッダーはまた、データセンター内の高性能コンピューティング、LED照明システム、電気自動車、無線電波(RF)送信機、高出力レーザなどにも使用されます。
特に、衛星や航空機のマイクロエレクトロニクスなど、過酷な条件に耐えなければならないような機器にも適しています。多くの航空宇宙産業用途に最適であるのは、軽量で、きわめて耐久性が高く、電気絶縁性があり、極端な温度下で熱を伝導することができるからです。
ダイヤモンドヒートスプレッダーは通常、発熱電子部品や、Sic、銅、アルミニウムなど他の材料で作られた大型のパッシブラジエーターとの間に配置されます。これは熱エネルギーをエレクトロニクスから、これら大型のパッシブ/アクティブラジエーターにすばやく移動させ、ここで熱を完全に放散することができます。
詳しくは、Coherent CVDダイヤモンド基板をご覧ください。