Coherentは、はや数十年にわたりデータ通信ソリューション分野を牽引しています。そんな当社から見たAIとは、メインストリームのネットワークと同じ光接続ソリューションを使用する以上、決して新しいものではありません。AIが近年注目を集めているのは、ハイパースケールデータセンターが大規模な機械学習ネットワークを展開しており、また、AIを活用した消費者向けアプリの増加傾向によってクラウドのさらなる拡大が予測されるためです。
当社は実際、クラウドへのAI/MLの導入初期から、これらに対応するトランシーバー(およびコンポーネント)を販売してきました。AI/ML光通信の仕様がイーサネットと密接に関連した派生物であることを考えると、この分野における当社の経験はさらに昔、35年以上前までさかのぼります。
ただし、新たな課題として、クラウドの成長をサポートするために、高速化や、データセンター内通信の大容量化、低遅延化が求められるようになりました。マシン間のクエリはすべて、素早くシームレスに相互接続されなければなりません。これはつまり、AI/MLの急成長によって、ハイパースケールデータセンター関連インフラストラクチャの中でも、AI/ML専用サーバーの成長が加速することを意味します。そして、これらのサーバーは、光トランシーバーを介してネットワーク全体に接続されます。
垂直統合により、高速化ソリューションを迅速に提供
現在、プラガブルトランシーバーの最先端は800Gですが、まもなく1.6Tのプラガブルも登場します。いつの時代にも、データセンターにおいてコスト削減は重要事項です。2023年に当社がOFCとECOCで実施したトランシーバーの性能デモンストレーションでは、スピードとコストに関するこれらの目標に向けた垂直統合の活用例をご覧いただけます。
第1世代の800Gは、8x100G構成の光レーンを備えたトランシーバーに依拠しています。盛況を博した当社の製品デモでは、200G光レーンをご紹介しました。これらのレーザを、OSFPフォームファクターの800Gトランシーバーに統合するという内容です。具体的には、8x100G PAM4電気インターフェースを4つのCWDM波長へと変換し、それぞれを200G PAM4で動作させました。この第2世代フォーマットは、以前の8x100G光レーンを使用したアプローチよりも電力効率が良く、費用対効果が高くなります。この2点はいずれも、相互接続の重要な要件です。私たちは、さらに別のフォーマットでもこれらのデバイスのデモを行い、200G PAM4では、新たに登場予定の1.6Tトランシーバーを最大到達距離10 kmでサポートできることを示しました。
200Gへの高速化には、過剰な消費電力の回避、低ノイズの維持、クロストークの排除など、大きな技術的課題が伴いました。しかし、当社は垂直統合を生かして、比較的迅速に200Gに到達できました。当社は、すべてのアクティブおよびパッシブテクノロジーを社内で設計・製造しています。これにはレーザ、光学系、熱管理ソリューションなどが含まれます。第1世代の800G製品と同様、これらの新しいトランシーバーの開発においても、当社は特定の技術に拘束されないアプローチを取っているため、簡単な構成を経て特定のフォーマットニーズをサポートでき、時間とコストを節約できます。
データ転送速度を高める高速ソリューション
データ転送速度が100 Gbps以上の高速データ通信では、主に以下の2種類のレーザが使用されます。
- 垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)(短距離用)
- 分布帰還型(DFB)レーザ: 変調器とともにフォトニック集積回路(PIC)に統合(長距離用)
電気吸収変調器(EML)を組み込んだレーザは、一般的なトランシーバーに広く使用されています。一方、マッハツェンダー変調器が統合されたレーザ(DFB-MZ)は、線形性とチャープ制御が必要な場合、たとえば、2 kmを超えるリンク長やリニアプラガブルオプティクス(LPO)などの用途に有利です。
Coherentは、現行世代の400G(4x100G)および800G(8x100G)トランシーバーで使用される100G EMLを大量生産しています。また、新しい800G(4x200G)および1.6T(8x200G)用途に対しては、200G EMLとDFB-MZテクノロジーの両方を用意しています。これらにより、性能とコストの両面で、各用途に最適なモジュール設計が可能となります。
どちらのPICファミリーにも、複雑なPIC(IQ変調器と波長可変レーザ)製造に長年携わってきた当社の豊富な知識と経験が生かされています。なお、200G/レーン、特に多数の送受信チャネルが高密度で集積されたトランシーバーでは、信号品位が何よりも重要です。当社のデータ通信チップファミリーはすべて、オンチップRF終端回路を備えており、優れた信号品位と最小限のクロストークを実現します。同回路はさらに、モジュール設計の簡便化や、コスト削減、卓越した信号性能も提供します。
常に一歩先を展望 - LPOがもたらすメリット
前述のとおり、AI/MLサーバーは外界との接続を光リンクに依存します。これらの光リンクは、高速かつモジュール式なだけでなく、低コスト、低消費電力でなければなりません。そこで、従来のトランシーバーに代わる比較的新しいフォーマットが注目を集めています。LPOは、トランシーバーからDSPを排除することで、低コスト、低消費電力、低遅延を実現します。DSPはスイッチASICとともにパッケージ化されますが、これは、ASIC、DSP、光学エンジンをすべてスイッチにまとめる代替同時パッケージ光学系とは異なり、フェイスプレートへの単純な電気配線を使用する構成です。
LPOがAI/ML用途にどの程度採用されるかは、未だ不明です。LPOはまだ初期段階にありますが、トランシーバーから排除されたDSPに代わる、強化されたDSP機能を備えたスイッチが登場し始めています。
トランシーバーの主要なイノベーターである当社の研究開発チームは、LPOプラガブルの将来的な市場需要に対応する有望なソリューションの開発に取り組んでいます。また、当社は垂直統合ベンダーとして、既存の各種技術や製品を活用し、LPOバリューチェーンをあらゆるレベルでサポートできます。その一例が垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)であり、これらのエミッタの当社による出荷数は実際、数千億個に達しています。その他の主要製品としては、レーザダイオード駆動回路やトランスインピーダンスアンプ(TIA)などが挙げられます。そのほか、すべての光通信を支え、さらにLIDAR、AR/VR、車載センサーを可能にするレーザダイオードおよびレーザダイオードアレイも提供しています。
Coherent: 昨日、今日、そして明日のAIを強化
データ通信は、ごく初期の時点から、常にさらなるスピードを追求し続ける宿命を背負っていました。そして近年、AI/ML需要の急増により、高速なデータ通信の開発ニーズがますます高まっています。AIが広く採用される中、垂直統合の強みと幅広い技術的専門知識を併せ持つ当社の独自性は、データ通信バリューチェーンのあらゆるレベルで、今後も有効かつ不可欠なソリューションをもたらし続けるでしょう。
CoherentのCTO、Julie Sheridan Eng博士が語る、AIにおけるCoherentの役割をぜひお読みください。